*セブドラ日記 [#i573663b] さて、遂に初めてのミッションの遂行です……と思いきゃ、意外な敵と戦う事に…… パーティにかつて無い危機が! **3日目 [#jaccae71] -カザン ロラッカ山洞 どうやら場所を間違えたらしい――クエスト管理局でもらった地図とこの場所の構造が合わないことに気付いたのは、幸いにも入って間もなくだった。 洞窟と聞いて早速訪れたこの場所で、それに気がついた僕たちは不意打ちをかけてきたカメを退けると、すぐに出口へ戻ろうとした。だがその時。 「な…っ…だ?」 今まで感じた事の無い気配。これまでの敵――トドワ山岳のムジナ達も強敵だったが――とは明らかに、圧倒的に違うモノ。奥からこちらを射貫くようなその気配は次の瞬間、目の前に強大な姿となって顕れた。身が竦む。声が出ない。 「……!……?!」 誰かの声が遠くで聞こえる。目の前の魔物の低い唸り声が周りの音をかき消す。何かが肩に叩きつけられる。後に引きずり倒される。身体を地面に打ち付けた衝撃と同時に、漸く魔物の前で棒立ちになっていた事に気がついた。 「何やってんのアンタは!」 外套を掴んだビリッチが声を荒げる。一度こちらを強く睨みつけると、伸びた外套から手を離し奥の方へ振り返る。まさか、あの魔物と戦おうというのか?信じられない思いを口にしようとして、それは透き通る声に阻まれた。 「……やるわよ。『目標は眼前の角竜』。ビリッチ!」 「ええ、ノーラ!仰せのままに!」 &ruby(プリンセスオーダー){歌姫の君命};を承け、&ruby(セイブザクイーン){忠誠の剣技};が洞窟を駆ける。が、しかしこの技も浅い傷を与えるに止まったようだ。反撃の角がビリッチの身体を捉える。 「ぐっ…〜〜〜っ!」 弾き飛ばされないよう、腰を落とし耐える。その一撃はやはり今までの敵とは比べものにならない威力のようだ。あんな物を喰らったらと思うと、背筋を冷たい物が走る。と、気付けば隣にノーラが来ていた。魔物の姿を見つめたまま語り出す。 「やはり、あれはドラゴンね…どうしてこんな所に居るのかは分からないけれど、野放しには出来ないわ。……何を呆けているのかしら?目標は示したはずよ?攻撃は彼女が防いでくれる。私は彼女のサポートに回るわ。だからだらしなく落とした杖を拾って、さっさと術を撃ちなさい!」 そう言うや、角竜に向かって駆け出す。……そうやら僕は、杖を取り落としていた事にすら気がついていなかったようだ。 杖を手にし、立ち上がる。服に付いた埃を払い、前に目を向ける。竜の放つ威圧感は先程と変わらない。いや、寧ろ戦いが始まって更に強くなったようにも思える。だが、今はもう恐れない。ノーラは僕を信じてくれている。だから僕は、怖がっている訳にはいかない! 「其は雷の子、黄なる魔力……」 一体何発撃てばいいのか、竜と戦った事のない僕には分からないけれど。 僕に出来る事――倒れるまで&ruby(ショック){電撃};を放ち続ける事―― 今は、それを為す! 「……槍となりて、我等が敵を貫け!」 -ミロス 名も無き洞窟