*セブドラ日記 [#j950b18f]
 今日も今日とてセンスドゴン。
 
 大統領府に呼び出されたギルドを待ち受ける物は……?!
 
 **4日目 [#pc5fd7cb]
 -カザン共和国 大統領府 入口
 
 「ふう…あの人がドリス・アゴートだったなんて……風格を感じてはいたけれど」
 
 大統領府から出た所で、大きく息を吐いてビリッチが呟く。どうやら王との謁見――という程仰々しくは無かったが――にはかなり緊張していたらしく、肩で呼吸を整えている。 
 
 「そうね。このカザンをたった一代で築き上げた人物だもの。そんな大統領の専属としてミッションを受けたなんて、凄く名誉なことだわ!」
 
 嬉しそうに言うノーラは、早く行きましょうと僕らを急かす。
 
 「先に薬を買ってからね。少し減ってきたから」
 
 この近辺の敵に遅れを取る事は無くなったとはいえ、甘く見ている訳にはいかない。パロの実を10個ほど買い足して、僕らはミロスに向かった。
 
 少し後に、この程度の準備ではまだまだ甘かったと僕等は思い知る。
 
 -ロラッカ森林
 
 「こいっ…つ!」
 
 ドラゴンの攻撃を受け流したビリッチが反撃を試みるも、剣は空を切るばかり。
 
 フロワロに覆われた、ロラッカ森林の奥に陣取っていた竜に、僕らは意外な苦戦をしていた。竜そのものは、先日の角竜に比べれば強くはない。だがこの一体に咲き乱れるフロワロの花、その障気が体力を奪い、動きを鈍らせる。かなりの数を用意していたパロの実は、この竜の前へ抜けてくるまでにほぼ使い切ってしまっていた。
 
 「いい加減、くたばれ……!」
 
 何度目かの電撃の呪文を放つ。頭部に命中したそれに怯んで、竜の動きが止まった所にビリッチが突っ込み、定められた標的に向かい剣を振るう!
 
 「やった?……!ビリッチ!」
 「……大丈夫よ」
 
 深く剣を刺されながらも、尚その爪を振るわんとした竜だったが、そこで力尽きたか。天へと届くような咆哮を上げ、その体躯を花の上に沈めた。互いの無事を確認する。
 
 「皆、大丈夫か?」
 「大丈夫よ。私は一度も受けてないから。」
 「私も問題無いわ。大した攻撃じゃなかったし。」
 
 倒れた竜が完全に沈黙する。すると、辺りに咲き誇っていたフロワロが次第に枯れ、そしてまるで何事もなかったかの様に、森はその姿を取り戻していった。しばらくすると、ミロスの衛士やプレロマの学士がやってきた。どうやら森全体のフロワロが、竜を倒すことによって祓われたらしい。
 後の事は任せてという言葉に甘え、僕たちはまっすぐカザンへ帰る事にした。
 
 思えばあの咆哮こそが、全ての始まりを告げる鐘であったのだろうか――
 
 -カザン ギルドオフィス
 
 「…うーん、ただの疲労ではなさそうですね」
 
 顔色が悪いぞと言われ、手配された医者が首を傾げる。そもそも僕ら自身が全く気がついていなかったのだ。竜に痛手を被った訳でもなく、毒を受けた訳でもない。となると恐らく原因は――
 
 ガォオオン…ドン!
 
 
 
 突如、大きな振動、爆発音が起こり、続いて人々の悲鳴が聞こえてくる。様子を見てくるとエランさんが飛び出していったが直に戻ってくる気配がない。医者が止めるのを、押し退け外に出た僕たちの目が、信じられない光景を映した。
 何時の間に顕れたのか、そこかしこに花開くフロワロ。広場や商店街に現れた竜……6、7、いやもう少しか。ふらつく体でも、これ位ならと足を踏み出す。
 
 「だ、だめよ、あなたたち!!」
 「そんな状態で戦うのは無茶です!」
 
 エランさんたちが心配そうに言うが、黙って見ている訳にはいかない。少し歩くと、大統領と側近達が居た。さらに周りには、弓を持ち、杖を掲げ、剣を構え――それぞれの準備を整えたハントマン達が居る。大統領は僕らの姿を認めると、にやり、として
 
 「来たか!!ドラゴン狩りのツワモノたちがおでましだ!一気に反撃にでるぞ!!」
 
 号令をかける。経験や仲間の多少に係らず、カザンの戦力が一丸となって困難に立ち向かわんとその号令に応じかけるその刹那――
 
 嘔吐感、虚脱感、意識が薄れる時の浮遊感、そして激しい痛み。それらがない混ぜになった何かが僕を射ち、そこで意識を失った。
 
 ……
 
 最後に、竜の雄叫びを聴いた気がする。
 

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